那岐山 Mt.Nagi / by SHIMPEI

「那岐山は優しい山だ」
と奈義が地元だというおじさんが教えてくれた。

2018年の大晦日に登った那岐山は鳥取県智頭町と岡山の県北の境にある標高1255mの残丘で、日本の神話のイザナギの命とイザナミの命が降臨したとも言われている神々しい山だ。(宮崎の高千穂峰も同じだったような、、と思っていたけど、あそこはニニギノミコトの降臨山だった)
岡山に住んでいた時はその存在を知らなかったけど、登山道は緩やかでよく整備されており、四季折々の景色が楽しめるため地元の人にも広く愛されている山らしい。

始めから同じタイミングで登り始め、登りの遅い我々とほとんど同じペース登っていたその人は、ウェアーとゲイターとプラスチックのソリをオレンジで統一した出で立ちで、真っ白な景色の中にあって一際目立つ。
「ご来光の下見に来たんだよ。毎年那岐山で初日の出を見る事が恒例になっていて」という通り、数時間後にまた登りに来るという。ご来光の下見という事を考えもつかなかったが、そんなに短期間に2度も登りに来たくなるなんてきっといい山なんだろうな、と話を聞きながらも思う。

薄曇りでガスのかかった真っ白な景色の中、大晦日の昼間にも関わらず登っている人はちらほらといて、すれ違うたびに「最高の雪ですね」と機嫌良く雪を踏みしめて追い抜いていく。

実際に片栗粉のような、フワフワ、キシキシとしたパウダースノーの気持ち良さは初めて体験する歩き心地で、奥さんと共に無邪気に掬って投げてみたり、巻き上げた雪から生まれる雪だるまレースを楽しんだりして大いに雪山を満喫した。

サラサラとした粉雪は辺り一面を真っ白に変えて、緩やかなフォルムを作り出す。そんな見た目の印象も加わって、包み込まれるような安心感の中を歩く穏やかでいい大晦日だった。

数時間後にまた同じ道を歩いたであろうオレンジのおじさんは、ご来光を無事に見ることが出来ただろうか。